こんにちは、大一電化社 営業の高橋です。
メーカーのStrongholdよりオンラインプラットフォームBOOST内でWorld Brewers Cup 2021チャンピオンのマット・ウィントンさんのインタビュー記事がリリースされました。
興味深い記事になっておりますので、今回はこちらの日本語版をお届けいたします!
インタビュワーはシエラ・ヨーさんです。(マットさんと共に昨年のSCAJ2024で大一電化社ブースでセミナーを実施していただきました)
シエラさんもUKのブリュワーズカップで優勝された経験の持ち主で、コーヒーに対して大変造詣が深いプロフェッショナルです。
以下、「注」を除いて、メーカーのStronghold視点の記事(一部編集)になります。
また焙煎プロファイルはStronghold S7Xの焙煎プロファイルになります。
それではどうぞ!
はじめに
みなさんこんにちは!シエラです —— コーヒープロフェッショナル、ライター、そしてコンテンツクリエイターとして、Stronghold Robotics Incを代表し、BOOSTユーザーとの率直な対談をお届けします。
このインタビューシリーズでは、世界的なコーヒーエキスパートから、Strongholdを使って日々技術を磨くロースターまで、幅広い声にスポットライトを当てていきたいと思います。
BOOSTユーザーがマシンをより活用し、焙煎スキルを深められるようなコンテンツをお届けするのが目的です!
今回、2021年ワールド・ブリュワーズ・カップのチャンピオンであり、Stronghold初のグローバルアンバサダーでもあるマット・ウィントンをご紹介できることを嬉しく思います。
マットはスイスで「Rose Coffee Roasters」を2022年から運営しています。最近ではエチオピアのAlo CoffeeのJARC 74158を焙煎していて、ウォッシュドプロセスの高地栽培された繊細でフローラル、紅茶のような風味を持つコーヒーです。
このシリーズでは誇張なく、マットのような経験豊富なロースターがStrongholdを日常的にどう使っているかを具体的にお伝えしていきます。
実践的なヒントやリアルなアプローチを明らかにし、Stronghold各機種における専門的な技術とBOOSTの機能がどのように活用できるのかを示します。この記事から得られる洞察は、どのロースター様にとっても実践に応用できるものとなると思います。
インタビュー本文
マット:こんにちは。マット・ウィントンです。2021年ワールド・ブリュワーズ・カップのチャンピオンで、Stronghold S7XとBOOSTを使用しています。

シエラ:まず最初に、マット、今回取り上げるコーヒーを分かりやすく説明してもらえますか? 密度や精選方法についていかがでしょうか。

マット:このコーヒーはエチオピアのコーヒーで、Alo ウォッシングステーションの豆です。標高2,400mを超える非常に高地の農園で栽培されています。生産者はタミル・タデッセです。品種はJARC 74158で、彼が絶対的に信頼している品種です。
このことから豊かなフローラルさと、クリスプでクリアなフレーバープロファイルが期待できます。典型的なエチオピアのウォッシュドですね。
この豆はパルピングされ、そのままベッドに移されました。(注: 特別な発酵プロセスなどは行っておらず、伝統的なウォッシュドの精選方法で精選し、専用の乾燥台で乾燥したもの…ということを示したいものと思われます。)
味わいは非常にフローラルで、ティーライクで、ストーンフルーツやレモンのようなフレーバーもあります。
エチオピアの非常に高い標高で育てられているため密度が高く、さらにウォッシュドプロセスであることを考慮して、焙煎アプローチを検討しないといけません。
特に焙煎時の1ハゼ前後は、この高密度・高地栽培のウォッシュドに合わせて調整します。
シエラ:いいですね。なぜ今回はこのコーヒーについて話そうと思ったのですか?
マット:自分が大好きなコーヒーだからです。毎日飲みたくなるデイリーコーヒーだと思います。
典型的なウォッシュドの特性があり、非常にコストパフォーマンスが良いですね。価格帯以上の価値があり、とても美味しい(extremely tasty) です。
またこのコーヒーでは多くの焙煎プロファイルを試しましたが、味わいに影響が出やすいと感じました。
シエラ:では、このエチオピアの実際の焙煎カーブについて教えてください。
投入温度や1ハゼ時の温度など、詳しく教えてください。

マット:このプロファイルでは、チャージ温度を175℃から始めました。通常より少し高めです。(注: 初期設定値は170℃なので、5℃高めに設定されたようです)
最初に多くの伝導熱と輻射熱を加えたいと考えました。なぜならこの豆は非常に密度が高いからです。
特に初期の豆のドライング・フェーズですね。最初の2分間はできるだけ多くのエネルギーを加えることが重要と考え、ドラムヒーターはいつもの2.5から3に上げて設定しました。
また撹拌速度も遅くしました。いつもは5か6にするところを、700g投入で4に設定しました。熱風とハロゲンは両方とも10からスタートします。

1:45頃にドラムヒーターを0.5下げ、その後は2.5に固定します。
また撹拌をあげていきます。豆が乾燥していくにつれて、撹拌速度を上げていった方が良いと感じています。そこで焙煎の終盤にかけて徐々に撹拌を10まで上げていきます。
同様に1:45頃から、ハロゲンを非常にゆっくり下げていきます。ハロゲンは焙煎の序盤には非常に良いのですが、終盤にはあまり適していないと考えているので、5分くらいまでに0になるように調整しています。
熱風は全体的に高めに保ち、焙煎の最後の3分の1あたりで徐々に下げ始めます。

高密度のウォッシュドコーヒーなので、1ハゼに入る時には多くのエネルギーが必要です。
Stronghold S7Xでは、IRセンサーによるBean Surface tempが1ハゼ時に大きな温度クラッシュ (注: 温度の上がり方が特定のポイントで大きく下がること) を示しますが、Internal tempを見続けるとそうでもありません。
これはRORカーブでも表れていて、青い線(Bean Surface temp)は1ハゼで大きく止まりますが、Internal tempはそれほどではありません。
シエラ:なぜ焙煎の序盤により多くのハロゲンを使うのですか? このコーヒーに合わせた調整でしょうか。
マット:これは全てのコーヒーでやっていることです。基本的に、序盤にハロゲンのような豆に浸透しやすいエネルギーを使ってできるだけ豆にエネルギーを与えます。後半は豆の密度が下がり、水分も抜けて柔らかくなるので、その時点でハロゲンを強く入れすぎないようにする、という考え方です。
シエラ:なるほど。このコーヒーの焙煎プロファイルを作るとき、カーブやカップの感覚でどんな重要なポイントを見ていますか? 実際に飲まれる方にとって飲みやすさを保ちながら、そのコーヒーの特徴を表現したいですよね。
マット:私にとって一番大事なのは甘さです。コーヒーが甘ければ、焙煎はうまくいったと言えると思います。
味がアンダーデベロップだと甘くならないし、オーバーデベロップだと焙煎によるロースティーな風味が過剰になります。
ロースティーな風味を最小限にして、コーヒー本来の風味を最大限に引き出し、甘さをできるだけ高めたい。
私は淹れるときも焙煎するときも、多少のボディがあるのは好きです。口に入れたときの質感が豊かだと良いと思います。
このコーヒーの場合、もともとティーライクな性質があるので、そのように淹れることもできます。ただし、他の浅煎りよりもファーストクラック前にやや多めにデベロップさせています。私は目標は酸やフレーバーだけでなく、フレーバーと甘さ、さらに少しのボディのデベロップを狙うことなんです。
シエラ:確認ですが、この焙煎はフィルター (注: エスプレッソではない淹れ方) 用ですよね?
マット:はい、その通りです。
シエラ:同じコーヒーでエスプレッソ用にするなら、どのようにアプローチしますか?
マット:主にデベロップメントの時間 (注: 1ハゼ後の時間) を長くします。フィルター用を狙ったこの焙煎のデベロップメントタイムは37秒でした。(通常は30〜45秒の範囲)この焙煎はフレーバーの軽やかさやフローラルさ、紅茶っぽさを残したかったので、やや軽めにしました。
シエラ:このエチオピアの焙煎は通常どのくらいのバッチサイズで行っていますか?サンプル焙煎のバッチとプロダクション焙煎のバッチでは焙煎アプローチは変わりますか?
マット:私はテストバッチは行いません。基本的にいつも同じサイズで、1バッチの量は600〜700gですね。このコーヒーもS7Xでそのくらいの量で焙煎しています。
シエラ:焙煎後にデータを見るとき、味わいを安定させるのに最も注意している指標を教えていただけますか?
マット:Auto Replication (注: 記録された焙煎プロファイルを元にした自動焙煎モード) を使うとき、Hot Airの温度カーブがどれだけうまく追従しているかを確認します。
ただ、これは日によって変わることもあります。ある日は高め、ある日は低めになることもある。
でも理想的には、自動焙煎と元のプロファイルの差異を見て、Bean surface tempとInternal tempが1℃以内で近く推移し、最終的にも同じ温度で終わっていることを確認します。
もし大きく違えばAuto Repulicationではなく、次のバッチではManual Roastingに切り替え、新しい焙煎プロファイルを作ります。これが僕が最も重視している点です。
シエラ:いいですね。最後に、Stronghold専用のオンラインプラットフォームBOOSTのお気に入り機能を教えてください。
マット:S7XでBOOSTを使っていますが、特に生豆の在庫管理機能が気に入っています。当然生豆の在庫管理をしっかり行うことは非常に重要です。入荷したときに数量をBOOSTで入力しておけば、焙煎するたびに在庫が自動で減っていくんです。
これは以前のオンラインプラットフォームStronghold Squareにはなかった機能ですが、本当に便利です。
シエラ:いいですね。ありがとうございました!
編集後記
基本的な考えは昨年セミナーを実施していただいた時のプロファイルがベースになっている印象で、コーヒー豆ごとに微調整して焙煎されている模様です。「S7X x このプロファイル」がMattさんのRose Coffee Roastersの屋台骨になっているのではないでしょうか。
昨年色々なコーヒーを試飲させていただきましたが、どのコーヒーもフルーティーかつ飲み心地の良さが感じられて本当に美味しかったです。
またみなさまと共有できる記事がありましたら、blogにさせて頂きます。お楽しみに!
✍️大一電化社 営業 高橋